美しい声のフランス人男性

今朝、フランス対スイスの試合を見た。見ごたえのある試合であった。
 ところで、泰日文化倶楽部で開講されているフランス語の授業は3ヶ月の休みに入った。テレサ先生が家族と共にヴァカンスでフランスに帰られるからだ。
 最後の授業は、これまでに習った構文を用いた文章がどれだけ聞き取れるか試された。内容は、テレサ先生の御主人の1週間における生活に関するものであった。スマホに録音してきた声の持ち主は、もちろん御主人の声。その声がなんとも落ち着きがあってすばらしかった。我々生徒はまずその声にしびれてしまった。声だけでも恋こがれていれば、フランス語の勉強がはかどるような気がしてきた。
 テレサ先生は、息子さんの声も吹き込んできて聞かせてくださる。一家をあげて、フランス語の授業に協力してくださっているかと思うと、非常に嬉しい。メルシー・ボク!

ギリシャ語 vs タイ語

ギリシャとの戦いは引き分けで終わった。私の恩師の松山納先生が授業中に次なる話をされたことが思い出される。
 「東大の言語学科で専攻の言語を選ぶ時に、人があまりやらない言語を専攻したらどうかねと、先生に言われたんだよ。たとえば、国の名前に<シャ>がつく言語をね。ギリシャ、ペルシャ、そして、シャムの中から選ぶといいよ。そこで、僕は考えた。ギリシャもペルシャも日本からは遠い。残るはシャム。そうだ、シャム語にしよう」
 松山先生の時代は、タイではなくて、シャムと呼ばれていた時代だ。
 通訳・翻訳会社である吉香から、「吉香ニュース 6月号」がメール配信されてきた。その中で募集されている言語は以下の通りである。スペイン語、ポルトガル語、タイ語、ギリシャ語、オランダ語、そして、広東語。
 ギリシャ語の翻訳は、おそらくワールド・カップと関連があること間違いなし。

ラオス在住のNさん

マリンメッセ福岡で開催された「インターナショナル・ギフト・ショー」に参加していたアジア・アフリカ雑貨店の店主Y子さんが東京に戻って来られ、昨日、みやげ話を聞く機会があった。
 このショーにはラオス在住のNさんと一緒に出展された。Nさんはベトナム経由で福岡入りをしたとのこと。ハノイと福岡は4時間のフライト。とても近く感じたそうだ。
 ところで、Y子さんからいつもNさんの話が出るので、旧知の間柄のような気がするが、実は一度もお会いしたことがない。「Nさんはラオスで何をしているの?」とY子さんに尋ねたところ、彼女は次のように答えた。
 「シルクの店でお手伝いをしています。ほかにいろいろとやっていますが、日本のおじさんで、地雷撤去の仕事をしている方がいて、その方に頼まれて翻訳なんかもやってますよ」
 それを聞いて、私はすかさず言った。「その方、もしかしてW氏じゃありませんか?」
 Y子さんはLINEでNさんに問い合わせてくれた。そして、わかったことは、やはり私が知っているW氏であった。
 W氏とは43年来、年賀状を交わしている。43年前、一緒にタイ語を勉強した仲間である。
 Y子さん曰く、「インドシナはつながってますね」

喋る仕事 喋らない仕事

最近、会計の仕事をしている女性達に会う機会が偶然にも3度も有った。「会計の仕事は一生、続けますか?」と同じ質問を投げかけたところ、いずれも皆、否定した。理由を聞くと、数字との格闘はいやだそうだ。
 一人の女性はこう答えた。「1円でも違うとだめですからね。数字とのにらめっこで、対話というものがありません」
 それを聞いて、声を出す仕事はいいなあと思った。特に、語学教師は90分、喋りっぱなしである。そういう意味では、全く退屈しない。2時間でも3時間でも、いや10時間でも喋り通す自信がある。
 しかしながら、対面販売の方達が接客する中でストレスがたまるが如く、教師というものも、結構、ストレスを感じる職業だ。その日のストレスを翌日まで引きずらないようにしないといけない。休日などは、何もない部屋で誰とも喋らない時間を持ちたいと願う。
 喋らない仕事もいつか飽きがくるであろうが、喋る仕事も、それが度を過ぎると人間性が安っぽくなる。中庸で行くに越したことはない。

ホット・カーペット

泰日文化倶楽部では11月から4月まで、ホット・カーペットを使用し、女性の生徒達のために大サービスをしている。今はそれをくるくると巻いて、まるでギリシャ建築のエンタシスの如く壁に立てかけている。
 先日、電気メーカーから封書が届いた。「貴宅のホット・カーペットの部品に不具合が発見されました。製品番号を確認したいのでお知らせください。交換に伺わせていただきます」、という内容であった。
 最近は購入品に関して、どこの誰が何を、いくらで、いつ買ったかまですべて把握され、コンピューターにインプットされているのは知っているが、7年前から使用しているホット・カーペットもちゃんと記録に残っていたわけだ。
 書状には、すでに引っ越した方、破棄した方、あるいは、製品を譲渡した方もおられるかもしれないが….という文言もつけ加えられていた。追跡できない場合は一体、どうなるのであろうか。火事でも発生したら大変だ。
 すべての個人情報が握られているということは、危険でもあるが、安全でもあるということ?

真理さんの句集

今年4月1日、チェンマイ在住の坂本真理さんが泰日文化倶楽部を来訪。その際、贈呈されたのが、『滑走路』(坂本茉莉句集 ふらんす堂刊 2013年8月)。
 頂戴した時から、私には緊張感が走った。私が一番、心が穏やかな時に拝読しなければ失礼にあたると思った。しかし、4月と5月はきわめて多忙であり、心ここにあらず……。
 昨日、すべての邪念をはらって、彼女の句集を読ませていただいた。森羅万象と仲良く遊んでおられる真理さんはなんと可愛い女性であることか! ペンネームは「茉莉」となさっておられるが、いずれの句にも、真理さんの心の中に「真理」を見た。
 真理さんは在タイ27年と聞く。句歴が長い彼女。透徹した眼。彼女の一句一句に彼女の生き方が光っている。いずれの句も秀逸だが、私は次のニ句を面白く思った。
 政争の尽きざる国の銀河かな
 野良犬の覗きこみたる夜学かな

異業者パーティー

昨晩、日頃から大変にお世話になっているS氏の誕生日パーティーが有った。通信関係会社の社長、インテリア関係のカップル、会計関係のカップル、介護士、そして、私の7名がS氏のお祝いをした。
 世の中に異業種交換会という催しがあるが、そのような会には興味が無い。ビジネス・チャンスを狙う気持ちが無いからである。
 ところが、昨晩の会合は互いに親しく話すことができて非常によかった。ビールとワインを飲む速度が速すぎたので、「皆さん、チヤーチャー(ゆっくり)ね」と、私が言うと、全員がタイ語に興味を覚え、「チヤーチャー(第4声)」と面白がって物真似をした。だが、次第に声調が抜けていき、「チャーチャー(第1声)となり、「お茶、お茶」になってしまった。
 昨晩の参加者の中で、熊本県出身の介護士に注目が集まった。いかに大変な仕事であるか、そして、いかに低賃金であるかということが、彼女の口からではなく、社長から説明があった。
 だが、「火の国 熊本」から上京した彼女は明るくて、はきはきとした口調で気合いたっぷり。地方から東京に来て、ひたすら頑張っている女性を見ただけで、昨晩は刺激をもらった。49年前の自分がそうであったから。

波照間島の黒糖

昨日、近所の鮨屋へ行くと、デザートに葛きりを出してくれた。葛きりには黒蜜がかかっている。
 「お客さんがいつも波照間島の黒糖をもって来て下さるので、うちで黒蜜を作ってお出ししているんですよ。黒糖は波照間島のものが一番ですって」と、大将の奥さんが言った。
 帰宅後、何気なく手に取った本は、『海人 うみんちゅ』(戸井十月著 双葉社刊 1994年)。読んでいると、偶然にも波照間島が出てきた。
 「波照間島に着く頃、海がコバルトブルーに輝き始めた。五郎の船は、島を左に見ながら這うように南西に進む。西側の海底は浅くて珊瑚礁が入り組んでいる。潮の流れと海底の地形から考えて、船が座礁しそうなポイントが多い」
 ところで、作者の戸井十月氏だが、元生徒さんが経営していた新宿御苑前のバーでお見かけしたことがある。喋ったことはない。2度目に彼を見たのは、そのバーの経営者、即ち、元生徒の葬儀の時であった。葬儀委員長をしておられた。
 だが、その彼も昨年の夏、旅立ってしまった。オートバイで五大陸を制覇した彼。男らしい生きざまを貫いたと聞く。

二ホンウナギ

「駅のマーケット街は、まだ闇市だったので、車など入れない歩行者天国は、すれちがう人々が互いに遠慮し合うほど混みあっていた。さつま揚げ屋があり、魚屋があり、八百屋があり、とりの餌屋があり、古着屋があり、しかも、それらの店は、うすい板ばり一枚でつながっていた。一つの店をのぞきながら、ほかの店のありさまを眺めることも自由だった。老人夫婦だけが働いているうなぎ屋さんもあった。女房は、その店とはいえない店の中に坐って、八十円のうなぎ丼をたべることが、無上の幸福だった。のみこむようにして瞬間的たべ終わったあと、まる一日ひと晩は上機嫌でいられた」
 この文章は、『目まいのする散歩』(武田泰淳著 中公文庫刊 昭和53年)の中から抜粋したものである。戦後の荻窪駅周辺の描写だ。
 ここ数日、二ホンウナギの絶滅危惧の話がニュースで取り上げられており、美味しい鰻が食べられなくなるかもしれないと言われ出したので、少々あわてている。早く食べておかなくてはと…..。
 だが、あまりにも高くなりすぎた鰻とはすでにもうかなり距離を置いている。医者からも美味しいものは食べ過ぎないようにと注意されていることだし…..。
 それにしても、うなぎ丼が八十円? 今はランチでも1600円するから、20倍だ。戦後の闇市時代に戻りたい。

四時に用事があります。

 先日、タイ人に日本語を教えていると、「四時」と「用事」の発音の違いがわからないと言われた。それではと思い、「四時に用事があります」という文章を何回も聞かせたが、やはり違いが聞き取れないそうである。日本人にとってみれば、単に短母音と長母音の違いだけだと思うのだが、発音がむずかしいらしい。
 たしかに、タイ人は、「おじさん」と「おじいさん」、「おばさん」と「おばあさん」をよく混同している。
 「四」の字は、数字としては「よん」で習うから、「四時」のことを「よんじ」と発音するタイ人が多い。「<よじ>ですよ」と教えてあげてもわからない。ついには、「<よん>と読む場合と、<よ>と読む場合の区別を教えてください」という質問がきた。
 だが、こればかりはケース・バイ・ケースだから、自然になじむしかない。たくさん発音して、直されながら覚えていくことだ。
 最近、独学をしているという方からメールで質問があった。似たようなタイ語の発音の違いがわからない、どうすればいいか、というお悩み相談だが、メールで回答するとますますわからなくなるのを危惧して、回答は避けた。タイ語の単語をカタカナ書きすると、もはや単語の違いは見えなくなり、より一層、悩みが増すだけだからだ。