波照間島の黒糖

昨日、近所の鮨屋へ行くと、デザートに葛きりを出してくれた。葛きりには黒蜜がかかっている。
 「お客さんがいつも波照間島の黒糖をもって来て下さるので、うちで黒蜜を作ってお出ししているんですよ。黒糖は波照間島のものが一番ですって」と、大将の奥さんが言った。
 帰宅後、何気なく手に取った本は、『海人 うみんちゅ』(戸井十月著 双葉社刊 1994年)。読んでいると、偶然にも波照間島が出てきた。
 「波照間島に着く頃、海がコバルトブルーに輝き始めた。五郎の船は、島を左に見ながら這うように南西に進む。西側の海底は浅くて珊瑚礁が入り組んでいる。潮の流れと海底の地形から考えて、船が座礁しそうなポイントが多い」
 ところで、作者の戸井十月氏だが、元生徒さんが経営していた新宿御苑前のバーでお見かけしたことがある。喋ったことはない。2度目に彼を見たのは、そのバーの経営者、即ち、元生徒の葬儀の時であった。葬儀委員長をしておられた。
 だが、その彼も昨年の夏、旅立ってしまった。オートバイで五大陸を制覇した彼。男らしい生きざまを貫いたと聞く。