空海の満濃池

昨日、『人間の経済』(宇沢弘文著 新潮社 2017年4月刊)を読んだ。いずれの章も示唆に富み、「ああ、そうだったのか」という思いにさせられる内容ばかりであった。過去の政治の失敗や腐敗があばかれているが、それを知るにつけ、現在の混迷もいずれは学者達が論文に書くのかと思うと、「もっと早く指摘してほしかった」ということになるにちがいない。
 上記の本を買う時、目次の中に「空海の満濃池」というのを見て、私はすかさず購入した。讃岐出身の空海と金比羅さんの近くに在る満濃池との関わりを知りたかったからである。
 「彼を慕う人たちが集まり、わずか三ヶ月で大修復工事を仕上げてしまった。これは日本古代の水利工学的な事業のなかで、一番に特筆される事業として今も語り継がれています」と宇沢氏は書いておられる。
 小学校の時に遠足に行き、大きな満濃池にびっくりしたものだが、空海の中国で学んだ叡智と人望でわずか三ヶ月で完成したことを知り、60年後の今、また驚いた。

季節を先取る

昨日はお茶の稽古日であった。床の間にリンドウ(竜胆)の花が生けられていた。私が「あら、リンドウ! 秋ですね」と言うと、茶花担当の生徒さんが「季節を先取ってます」と答えられた。湿度が高い毎日が続いているのでもやもや感があったが、リンドウの紫色を見て、気持ちが涼しくなった。
 現状維持で過ごしていると退屈だ。それから脱却する方法として、「季節を先取る」のも一手である。五感をさわやかにするには、視覚、味覚、嗅覚、触覚、聴覚を刺激しよう。私はすでに虫の音を聞いた。それだけで自然界では季節の移ろいが進んでいることを知った。
 今日で2017年7月も終わり。今日一日、自分だけの工夫でひんやり感を演出し、頭を冴えさせて、タイ語の勉強をしよう!

印象に残った女性バス運転手

久々にまた青森の話に戻るが、櫛引八幡宮へ行った帰りに乗った三戸バスの運転手は女性であった。しかも若かった。25歳位かな?
 八戸では何度もバスに乗ったが、60歳以上の不愛想な男性運転手ばかりであったので、彼女を見た時、とても新鮮に思われた。車内放送も丁寧だ。いやいや仕事をしている様子はなく、その日一日をさわやかに運転して任務を遂行しようという気持ちが彼女の横顔から見てとれた。
 そこで私は想像した。彼女には恋人がいる。仕事が終われば、その彼氏と美味しい食事をしながらデートを楽しむに違いない、と。
 働く女性は多い。だが、現在やっている仕事に疑問を持ち始めると、だんだん迷いが生じて来る。もっとほかの仕事があるはず? 適職を見つけ、それが天職にまで到達して行く道のりは長い。天職が見つかるまで転職をし続けるのも一計だが、果たして我慢やいかに。

隠蔽する(ปกปิด) & かばう(ปกป้อง)

「隠蔽する」というタイ語にはいろいろな表現(例: ซ่อนソーン、 อำアム)が有るが、ここでは「ปกปิด ポックピット」を採用することにする。
 そして、「かばう」というタイ語にもいくつか有るようだが、私が一番よく使うのは「ปกป้อง ポックポング」である。
 さらに追加して、「統治する」のタイ語は「ปกครอง ポッククローング」である。
 これら3つの単語に共通するのは第一音節の「ปก ポック」である。これだけならば、「襟」という意味だ。
 現在、大問題になっている政治の迷走は、タイ語の辞書の中では、いずれも同じ見出し語の範疇にくくられて出てくる。偶然とはいえ、襟を正さない限り、そして、かばい過ぎれば隠蔽体質に陥り、統治(ガバナンス)はガタガタになるということか。

知進知退 随時出処

 昨日、神田須田町の和菓子処「庄之助」の<厄よけ大島あんころ>を頂戴した。菓子箱の中に入っている小さな紙には次なる文面が有った。「夏の土用入りに大島あんころを召上って、厄よけの心祝いをなさるのは、古く四百年来のしきたりであります」
 ところで、包装紙を見ると、相撲の立行司が持つ軍配の二面が描かれており、「知進知退 随時出処」と「冬則龍潜 夏則鳳挙」と書いてある。これら八文字熟語は意味が深い。特に前者は…..。「進むべきときを知り、それから退くことを知り、いつでもそれに従うこと」は大切な心構えなり。
 穿った解釈ではあるが、「知進知退」の四文字だけに注視すれば、「知識は一進一退」とも読み取れる。暑さ本番の真っ最中、知が痴にならないよう、大いに頭脳を鍛えよう。

昭和23年創業の書店

昨日、目白駅近くの書店の前を通ると貼り紙がしてあった。
 「閉店のお知らせ 誠に勝手ながら7月25日をもちまして閉店させて頂きます。 昭和23年創業以来長きに渡り御愛顧頂き心から感謝を申し上げます。野上書店」
 そして、ガラスドアに貼られた3枚の白紙には、数千人の目白の住民が思い思いの感謝の言葉を書いていた。白紙はすでに白い部分が消え、色々な色に埋まり、世界に一つしかないアートになっている…….。
 ああ、また書店が消えた。昭和23年と言うと、1948年。69年間、目白に「知」を届けてくれた書店が消えた。

新しいタイ人講師

昨晩、ミカン先生が後任者候補を教室に連れて来られた。彼女のご出講は8月末までなので、新しい講師を私に紹介したいというわけだ。
 新人講師はチュラロンコン大学工学部を卒業して、目下、東京医科歯科大学に留学中の青年である。来月、25歳(เบญจเพส)になるとのこと。日本には修士号、博士号を取得に来ているが、在日2年半が経過したので、現在は博士課程で研究中。
 泰日文化倶楽部は優秀なる講師に恵まれ、主宰者である私はいつも幸せである。タイへ本帰国する講師には後任者を紹介するようにとお願いしているから、私があわてふためくことは一切無い。
 講師は約2年ごとに変わっていく。従って、3年以上在籍している生徒にとっては、数人のタイ人講師と勉強する機会が有る。日本に留学中の文科省奨学金取得者のタイ人は極めて優秀だ。生徒の皆さん、今以上に気合を入れて、タイ人講師達から多くのものを吸収しよう!

東京オリンピックまであと3年

昨日は、「東京オリンピックまであと3年」というニュースが何度も流された。今朝もまだそのニュースの続きが…..。
 日本人は期限を設定するのが好きな国民だと思う。昨日の朝、NHKに出た有森さん(マラソン)は、「スポーツ選手の場合、オリンピックの1年前には選考が決まっているから、練習と心構えはこれからの2年が勝負」と言い、「あと2年」を強調していた。
 ところで、今日のブログは、久しぶりの宿題である。「~まであと3年」という表現を作り、それをタイ語で書いてみよう。
例:1)卒業まであと3年、2)退職まであと3年、3)還暦まであと3年、4)子育てが終了するまであと3年、5)1千万円貯めるまであと3年、6)ローンの返済が終わるまであと3年、7)資産1億円を形成するまであと3年、8)復興まであと3年、9)タイへ移住するまであと3年。10)から以降の例文は、ご自分で考えてください。

同郷の生徒

先月末、香川県出身の生徒さんが「他にやりたいことが出来ましたので」という理由で退会された。私と同郷であったという縁で、私としては彼が教室を去ったことが残念でならなかった。
 ところがである。7月に入って入会された方の出身地を尋ねると、「香川県です」という答えが返って来た。思わず「香川県のどこ?」と聞いてしまった。「丸亀」と彼は言った。私はびっくり。退会された方は高松出身であったが、新しい生徒さんはまさしく私と同郷だ。泰日文化倶楽部を創立して28年10ヶ月になるが、ついに丸亀出身者がタイ語を勉強しに来られた!
 出身地を尋ねる理由は、語学の勉強にとって必要なデータであるからだ。雪国出身者はあまり口を開けない。海に面していない県(例:栃木県、群馬県、長野県、岐阜県、等)の出身者は大人しいという説が有る。外国語の上達には、内向的ではなくて外向的であることが望ましい。そして、外国人と会話するわけだから、外交的であることも必要だ。

99歳の目標

昨日、生け花クラスが実施された。猛暑の中、いつもの生徒達があちらこちらから集まって来た。中には山梨県猿橋在住の方もおられる。生けた花は向日葵、レザーファン、そして、スプレーバラの三種。
 授業後、華道講師に尋ねてみた。「お母様はいかがです?」
 講師はこう答えた。「日野原先生が105歳でお亡くなりになったことが、99歳の母にはものすごくショックだったみたいです。母は日野原先生を目標としていましたから」
 それを聞いて、年齢に関係なく目標(เป้าหมาย)を有することはすばらしいことであり、それが長生きの秘訣なんだなあと思った。60歳や70歳はまだ若いほうの部類に入る。70歳を過ぎてからでも何かを始め、そして、憧れの人を想定して、わくわくした気分で毎日を送るようにしたいものである。