空海の満濃池

昨日、『人間の経済』(宇沢弘文著 新潮社 2017年4月刊)を読んだ。いずれの章も示唆に富み、「ああ、そうだったのか」という思いにさせられる内容ばかりであった。過去の政治の失敗や腐敗があばかれているが、それを知るにつけ、現在の混迷もいずれは学者達が論文に書くのかと思うと、「もっと早く指摘してほしかった」ということになるにちがいない。
 上記の本を買う時、目次の中に「空海の満濃池」というのを見て、私はすかさず購入した。讃岐出身の空海と金比羅さんの近くに在る満濃池との関わりを知りたかったからである。
 「彼を慕う人たちが集まり、わずか三ヶ月で大修復工事を仕上げてしまった。これは日本古代の水利工学的な事業のなかで、一番に特筆される事業として今も語り継がれています」と宇沢氏は書いておられる。
 小学校の時に遠足に行き、大きな満濃池にびっくりしたものだが、空海の中国で学んだ叡智と人望でわずか三ヶ月で完成したことを知り、60年後の今、また驚いた。