一服の吸引力

 昨日、抹茶を点てた。15日の初釜に備えて少しは練習しておこうと思ったからである。茶道は精神的な世界へ導く効用が有るため、コロナ禍の閉塞感が蔓延する中、是非ともお勧めしたいと我が茶道講師はおっしゃっておられる。
 抹茶を一服したのち、気合を入れて教室へ向かった。個人レッスンの生徒さんを迎え入れると、不思議や不思議、彼女が和菓子を差し出したのである。「松江に帰省しておりました。松江のお菓子です」
 私はすぐに応じた。「松江と言えば大名茶人の松平不昧公(松江藩中興の祖)が有名。松江には美味しい菓匠がたくさん有るんでしょうね」
 茶道は主菓子をいただいてから抹茶を喫する。昨日の私の場合は菓子が無かったから抹茶だけで済ませた。ところが茶の神様が私を憐れんで江戸時代からの菓匠の菓子を届けてくださった。一服の吸引力に不思議を覚えた。