『小説 田中絹代』

先日、NHKのアーカイブズ・フィルムで、映画監督の五所平之助(1902-1981)が「田中絹代は下関なまりがあってね~」と話していた。
 そこで、新藤兼人監督(1912-2012)が書いた『小説 田中絹代』(読売新聞社 1983年)を読み直した。
 田中絹代(1909-1977)は下関で生まれ、8歳からは大坂。15歳からは東京で暮らしている。東京の向島育ちの五所監督にとっては、地方から来た人の発音はおそらくすべてダメ出しであったことであろう。
 私は実物の田中絹代を見たことがある。映画「サンダカン八番娼館・望郷」でベルリン映画祭女優演技賞を受賞し、新宿の紀伊国屋ホールで記念講演会を催した時だ(1975年)。凛とした女優さんのイメージはいまだに瞼に焼き付いている。