宮沢賢治と家族愛

昨日、第158回直木賞作『銀河鉄道の父』(門井慶喜著 講談社 2017年)を読んだ。本の帯には、<父でありすぎる父親が宮沢賢治に注いだ無上の愛。感動の「親子」小説!>と書いてあった。
 父親もさることながら、母親もすばらしい。そして、弟も妹も賢治の良き理解者だ。妹の一人が日本女子大学に在籍中、1920年のスペイン風邪の影響を受けてか否かは不明なものの、赤痢にかかり、母や賢治が上京して来て懸命に看病する様子が描かれているが、とても興味深く読んだ。何故ならば私はその近くに住んでいるから土地鑑があるのである。
 花巻に帰った妹が結核で闘病生活を送っている時、賢治に向かって童話を書くようにと勧めたくだりも感銘を覚えた。優しくて、実直なる家族あってこそ、宮沢賢治が世に残ったと思う。
 宮沢賢治が教えたことがある花巻農業高校で、現在、私の教え子が教鞭をとっている。彼は東日本大震災の時、陸前高田の高田高校で恐怖の体験をした。長い間お会いしていないが、彼の純朴なる笑顔と声と話し方は私の脳裏に焼き付いている。