浪漫主義文学

最近、そろそろ本を整理しなければと思い、もう読まないであろうと思う本を徐々に捨てることにした。昨日、『天の夕顔』(中河与一著 新潮文庫 2003年)を手に取った時、これは捨てられないと思い、再読開始。
 著者の中河与一(1897-1994)は香川県生まれ。旧制丸亀中学から早稲田大学英文科に進学(後、退学)。余談だが、父は1学年下なので、彼を知っていると言っていた。そして私も後輩。
 同じく香川県出身の菊池寛が『文藝春秋』を創刊した時に、横光利一、川端康成(1899-1972)と一緒に小説を発表。
 解説者に拠れば、『天の夕顔』は昭和13年(1938年)に発表され、以来、大東亜戦争中から戦後にわたって、おおよそ45万部が売れたそうである。
 恋愛小説だと思えばそれまでだが、世の中がすべてのんびりしていた時代の男女の心の機微を描写しており、自分に正直なあまり苦悶する登場人物が、読後、さわやかな偶像絵となって残った。日本の浪漫主義文学を見直したい。