『人間の経済』より

『人間の経済』(宇沢弘文 講演録 新潮社 2017年 )を再読した。各ページ各行にわたり、すべての文章が示唆に富んでおり、黙って筆写したいくらいだ。長文を引用するのは著者に失礼だが、時期が時期だけに、以下の箇所を引用させていただきたい。
-ー かつて大阪大学の岸本忠三総長が、リストラされかけた経済学系の教授たちから陳情を受け、冗談交じりに「あなたがたの業績すべてを併せても、私一人の業績に及ばない」と言ったことがあります。しかし私に言わせれば、免疫学者としての岸本先生の業績は、日本中のすべての経済学者の業績を全部併せても及ばないでしょう。-- (p.78)

--しかし私は、医学が人間の病を癒す学問であるとすれば、経済学は社会の病を癒す学問であると自分に言い聞かせて、経済学の道に移りました。--(p.123)

 <人間の命>か、<経済優先>か、という段階に入って来ている5月、かつては医学の道を志された宇沢先生がご存命であれば、果たしていかなる断を下されるであろうか。