ジャガイモ病

『時代の風音』(堀田善衛・司馬遼太郎・宮崎駿の鼎談 UPU社 1992年)の中に「食べ物の文化」という章があり、<ジャガイモがヨーロッパを救った>という項目で、三人が次なる話をしている。
 司馬:日本の年号でいうと明治四十年前後に、アイルランドでジャガイモの病気による大飢饉がありました。あの葉っぱになにかつくジャガイモ病が流行りましてですね
 堀田:腐ってしまう。
 司馬:それはあとで、ボルドーのブドウ畑でまいているボルドー液をジャガイモにもかければ簡単に退治できるということはわかるんですけど、そのことがなかなか思いつかない。ケネディの先祖も、たしかレーガン大統領の先祖も、ジャガイモがなくなったので、それでアメリカへ行ったんじゃないですか。ジャガイモ飢饉がアメリカの劇的な大統領と演劇出身の大統領をつくった(笑)。
 宮崎:百万人死んだって言いますもんね。あれで。
 堀田:百万人が死んで、百万人が祖国を捨てて、アメリカへ渡った。
 司馬:ボルドー液がアイルランドをやがて救う。本当の近代というのは、そういうところから始まっているんじゃないか。
 
 明治40年は1907年。113年前の話だ。果たして、COVID19はいかなる影響と変貌をもたらすのであろうか?