王宮前広場へ(2)

道路は閉鎖されていた。警備の警察官がバナナ君に駐車場の場所を教えたので、車は王宮前広場をぐるりと回る感じで移動し、ターチャーンにある海軍の駐車場まで行った。チャオプラヤー河はいつものように小船が行き交い、平和そのものであった。
 運転手のバナナ君に朝食をとってもらうために海軍婦人友好協会のレストランに入り、鶏あんかけ飯を注文。私はなまのココナツを頼み、冷たく冷えたココナツ水を飲みながら、目の前にある王宮の白い壁に眼をやった。壁の上にある凸凹上の飾りが菩薩に見えた。235年の長きに亘るラタナコーシン王朝を、白い菩薩達が従者として、国王を、そして、タイを忠実に見守って来たように思われた。
 杖をつきながら歩き始めると、すぐに芸術大学のところに出た。そこに検問所が有り、外国人である私は旅券の提示を求められた。日本人であることがわかると、警察官はすぐに「ありがと」と言った。知っている日本語が単にそれだけであったのか、それとも、「わざわざ遠くからやって来てくれて御礼を言いたい」という意思表示なのかはわからなかった。