王宮前広場へ(3)

芸術大学を過ぎて、いよいよ王宮前広場に出た。御火葬殿の西側がよく見えた。入り口は東側の一ヵ所に規制されていたので、エメラルド寺院とは反対側の方へと回らなければならなかった。
  国防省と国礎廟を右手に、そして、御火葬殿を左手に見ながら思った。国王をお守りするのは国軍であり、そして、バンコクの土地の礎の神様なのだ。ラーマ9世はしっかりと守られておられた。
 私はふと振り返った。そして、驚愕した。エメラルド寺院が威風堂々たる威厳を放って迫ってきたからである。これほどまでに美しいエメラルド寺院を感じたことは初めてだ。『王朝四代記』の主人公であるメー・プローイと同じ心境にひたることができて本望であった。
 10月25日、1年余に及んでエメラルド寺院に安置されていた御棺は王宮前広場の御火葬殿へと恭しく移動された。そして、26日午後10時に御遺体は白檀の香りと共に荼毘に附され、須弥山の最高壇へと昇天あそばされた。
 しかし、現地に立って、私は思った。ラーマ9世の魂はすでにエメラルド寺院に御戻りになられておられる! そして、これからもタイの発展をあたたかく見守り続けていかれるであろうと…..。