寺山修司と高田馬場

昨日、高田馬場駅前のビルの中に有る古本屋で、『母の蛍 寺山修司のいる風景』(寺山はつ著 新書館 1985年)を購入。文章が自然体で書かれており、一気に読めた。寺山の奥さんが書いた本は読んだことがあるが、彼をはさんで対極にある母親が書いた本はそもそも彼を産むところから始まっているから、どう見ても奥さんはかないっこない。
 それにしても文章が上手い。彼女の苦労を縦糸に、そして一人息子を愛する母親の心理を横糸にして、文章がうまく織り込まれ、必死で生きて来た<女の一生>が浮かび上がっている。
 「まもなく修ちゃんから高田馬場にいい下宿を見つけたという連絡がありました。そこで私は引越しの日、そこに駆けつけました。石川さんといって福祉事務所の所長さんのお宅で、夫婦二人にネコが一匹の家庭で、学校を通して紹介されたのです」という文章が有った。寺山修司が早稲田大学へ通っていたのは知っていたが(注:演劇の仕事が忙しくて中退)、高田馬場に住んでいたことがあるのを知り、親近感が湧いた。