英語を教えて下さった恩師達

 先日、美容院へ行くと新人の美容師が担当してくれた。私が教師であることを明かすと、「僕には思い出に残る先生が一人もいません」と言ったので、「それはまた、淋しいことね」と言うしかなかった。
 ひるがえって考えてみると、私は英語の先生に恵まれていた。中学時代も高校時代も、先生達はとても熱心に教えてくださった。生徒が文法的なことを質問すると、「それは習慣じゃ。そのまま覚えなさい」という先生がおられたが、その先生の顔はいつもにこにこして、「深く悩むな」と言わんばかりであった。
 いずれの外国語も難しい。日本の方言も然り。習ってすぐに話せるようになるものではない。おでん種(おでんだね)のように、鍋の中に入れられて、ぐつぐつ煮込まれて、汁を吸って、それから、味をしみ込ませる必要がある。語学の勉強は料理の勉強に通じるような気がして来た。