青森旅情(19)

私が八戸に滞在中、本八戸駅の駅舎内に東京にある諸大学のパンフレットを置き、のぼりを立てて業者が東京の大学を宣伝していた。それらを目にした高校生達は東京へ行こうという気持ちをよりいっそう掻き立てられるにちがいない。
 老舗のフルーツパーラーに入ると、親御さん達が子供の進学のことで深刻そうに話している。「早稲田? 慶応?」、と。
 東京にあこがれる気持ちはわかる。私もそうであったから。中心街にあるみろく横丁で知り合った屋台の店主(56歳)はこう言った。「一度は行ってみることですね。そういう私もそうでしたから」
 地方の街に活気が無いのは全国いずこも同じ。若い人が少なすぎる。井上やすし氏は「昌益国際フェスティバル・八戸」(1992年)で、「高いお金を使ってこのような会を開くよりも、そのお金で学校をつくったほうがいい」と述べたそうだ。地元に残ることを選択した若者に対して、創造的でためになる<学びの場>を提供するのは良い発想である。