青森旅情(6)

7月1日(日)に久慈(岩手県)から三陸鉄道に乗ると、定年退職組の高齢者がたくさん乗っていた。話しかけると大阪から来たことがわかった。道理でにぎやかだ。「修学旅行みたいですね」と私が言うと、「終活旅行なのよ」と、おばさんは陽気に答えた。
 私が三陸鉄道に乗ってとても感心したことが有った。それは、宮古からの帰り道の出来事である。途中から80歳近くのご夫婦が乗車して来た。しばらくして、ワンマン運転の運転手さんがめがねを持ってやって来て、「あのー、待合室にお忘れでしたよ」と言いながら、おじいさんに手渡した。おじいさんは勿論とても喜んだ。
 電車が停まるたびに、運転手さんがホームの待合室の椅子を軽く点検することを、その時、私は知った。ほんのちょっとした心配りが旅の思い出を旅行者の心に残してくれる。