哀悼のタイ王国(終)

 ホテルのテレビ画面の前に陣取りながら、プミポン国王の幼少期に思いを馳せていたが、そろそろ旅の時間もあと一日を残すのみとなった。
 国王は御隠れになられた。しかし、国王の存在感がどんどん迫力をもって伝わってきた。国王がお話しになられる御言葉には力がみなぎっておられる。国民を魅了してやまない言霊が潜んでいる。
 王宮前広場でタイ国民が国王讃歌を歌ったあと、テレビのアナウンサーはこうつけ加えた。
 「皆さん、是非、『王朝四代記(สี่แผ่นดิน)』をお読みください。とても示唆に富んでおります」
 それを聞いた私は、この本の翻訳者として、とても光栄に思った。