哀悼のタイ王国(28)

10月21日(金)、ホテルの近くで新聞と果物を買い、部屋に戻ると、すかさずテレビをつけた。タイの人々の国王に対する気持ちを少しでも聞きたかったからだ。
チャンネル3の合同追悼式が会社の正面にある広場で行われている様子が中継された。前列に並ぶ人達は有名な俳優やキャスターであった。涙をぐっとこらえた男優の顔…。涙がひとすじ流れている女優の顔…。
200人位のスタッフが社長や取締役とともに国王讃歌を合唱し、そのあと、大地に全員がひれ伏した。軍隊にも負けない統率力が感じられた。
私が一番驚いたこと、それは、司会進行を担当している女性アナウンサーが、一言もかまなかったことだ。国王の御名前は肩書も入れるとものすごく長い。そして、発音が難解だ。いくらプロといえども、一回くらいはとちるかなあと思ったが、完璧であった。そして、彼女の落ち着いた声の調子は国民を代表して、哀悼の気持ちをタイ国全土に永遠に伝え抜くかの感を呈していた。