哀悼のタイ王国(25)

王宮前広場を取り囲む散歩道にはたくさんのボランティアがいて、タイ料理をふるまっていた。地方からバンコクに来た(เข้ากุงเทพฯ)人々には空腹を満たすのにもってこいの場所だ。私は並ぶのがいやだったので、アイスクリームをもらい、タイ人の観察をした。皆、黒服を着ているが、喪服ではない。普段の気持ちそのままで国王に別れを告げに来ている。それがいい。
食べる表情には屈託がない。すぐ近くにはトイレバスが数台、用意されているから、いくら食べても、そして、いくら飲んでも心配がない。警備にあたっている警察官の顔も優しさに満ちている。
マッサージをしているブースの前でマッサージの技術を見ていると、「あなたも並んだらどう?」と言われた。後ろに敷かれたござに目をやると、たくさんのタイ人が座り込んでいた。
私は民主記念塔(อนุสาวรีย์ประชาธิปไตย)近くまで歩いて、タクシーをひろい、パラゴンへと向かった。