哀悼のタイ王国(24)

王宮前広場(สนามหลวง)の元来の名称は「ทุ่งพระสุเมรุ」であり、王族の葬儀場として使用されるのが主たる目的である。仏教界における須弥山思考に基づき、世界の中心に須弥山がおわしまし、その中の最高峰に今は亡き王族がのぼりつめられ、どうか安らかに永遠の眠りにつかれますようにという気持ちで葬送(火葬)の儀が行われることになっている。
 王宮前広場では、昔、サンデーマーケットが行われていた。タイ人に連れられて初めてそこへ行った時、なんと楽しい場所かと興奮した。なかでも小動物がたくさん売られていて、まるで動物園みたいであった。交通渋滞を解消するために、1982年からチャトゥチャックへ移ったが、モーチット駅のホームから見ると、屋根ばかりで窮屈そうだ。青空の下のサンデーマーケットは実に開放的な感じがした。そして、4月は凧揚げ大会が開催され、雄凧・雌凧が上空を舞った。
 だが、悲しいかな、ついにその日はやって来た。葬儀のための宮殿を建てる地ならしが始まったそうだ。来年2月に完成するとのことだが、事が着々と進んでいることに対して、なんとも形容しがたい気持ちにおちいらざるを得ない。