哀悼のタイ王国(22)

 タイとの御縁の深さを国王に感謝してずっと平伏していたら、周囲のタイ人達はもう立ち上がっていた。タイでは正式な座り方が横座りだから、そのようにしていたら、いざ立ち上がろうとすると、なかなか体が動かない。困った、困ったと思っていたら、誰かが手を差し伸べてくれた。嬉しかった。
 隣室に移動すると、そこには長机がいくつも置かれていて、役人らしき人達が座っていた。拝礼が終わった人々が記帳する場所であった。私もその記帳台で名前を書いた。タイ人達の署名はいずれもきれいな書体であった。そこに「吉川敬子」と漢字で書くと、なんとなく違和感が有ったので、署名は英語とタイ語の両方でした。
 外に出ると、大勢の人達が屈託なく記念写真を撮っていた。女子高校生達からシャッターを押してくださいと頼まれたので、心よく応じた。彼女達が母親となった時、我が子に向かって、この日のことを語り継ぐことであろう。