哀悼のタイ王国(18)

 芸術大学の学生達が描いたプミポン国王の絵の前で、大勢の人が記念写真を撮っている。そこで、私も写真におさまった。
 王宮にはたくさんの門があるが、最初に通りかかった門には衛兵が立っており、王宮内から出て行こうとしている高級車に向かって敬礼をしていた。高位高官の方達が拝礼をすませて出て来ているところであった。
 庶民が入れる門はまだまだずっと先だ。並んでどんどん入って行く様子が見えた。ああ、もう少しだと思っていたら、直接、門に入れるわけではなくて、反対側の道路上に設置されたテントの中を通過しなければならなかった。警官が立っていたから、荷物検査が有る様子だ。
 しかし、テントの横にはたくさんのボランティアがいて、水や気つけ薬や強壮剤を大きな声を出しながら配っている。中には、かぼちゃを油で揚げながら、「さあ、食べて食べて」と盛んに勧める。新聞に包まれた熱々の揚げかぼちゃを私は急いでほおばった。だが、待てよ、私はかぼちゃを食べにここに来たのではない。主たる目的は王宮へ行き、拝礼し、記帳することだ。