哀悼のタイ王国(17)

土産物屋には王家の写真や絵葉書がいっぱい売られていた。私は額縁に入ったプミポン国王の写真立てを2つ、そして、写真を10枚ほど買った。泰日文化倶楽部のタイ人講師へのお土産にしようと思ったからである。
 薄暗い屋根に覆われていた土産物屋を出ると、急に視界が開けた。遠くに王宮の白壁が見えた。黒服の人々が皆、同じ方向に向かって歩く。シラパコーン大学(=芸術大学)の学生達が大学の白壁に描いた国王の絵がいくつも有った。国王を思慕する学生達の絵筆は確かなものであった。写真で見る国王よりも、慈悲のまなざしが強く感じられた。学生達は国王への気持ちを表わすには、今、この時しかないという思いで白壁に向かい、そして、一心不乱に描いたにちがいない。