バンコクぶらぶら(11)

バンコクでは大学で私からタイ語を習ったS君(30歳)にもお会いした。バンコク在住6年目の彼は運転手付きの車で私を迎えに来てくださった。そして、ラーマ4世通りを通ってプラカノン方面へと車は進んで行く。
 「あら、この辺りは私が44年前に初めてバンコクに来て最初に泊めていただいた家に近いわ」、と、私は思わず言った。
 「僕、この辺りに住んでいるんですよ」と、S君が土地に馴染んでいるかの如く、自然に応じた。
 ラーマ4世通りからスクムビット通りに抜ける道沿いの光景は昔の雰囲気をいまだにとどめていた。
 S君は「ต้นทอง トン・トーング 黄金の木」という名前の美味しいタイ料理店へ連れて行ってくださった。
 「この店の発音、難しくて…」とS君。「無気音と有気音、そして、末子音のnとng、そして、声調が下声と平声だから、正しく発音するのは、日本人には大変ね」 
 そういう私はいつのまにかタイ語講師の顔になっていた。