バンコクぶらぶら(9)

 タクシーに乗ってトンブリのバンイーカンというところまで行ったものの、見覚えのある町の風景とは違っていた。運転手に向かって、「ここじゃないわ。バイクタクシーのお兄ちゃんに訊いてみてよ」と言った。
 しかし、誰も知らない。どうにかこうにかぐるぐる回って、もう一度、年寄りの運ちゃんに訊いてもらったら、「あそこを右に回れば左手にあるよ」と言われ、安堵した。ところがその支店は私の行きたい支店ではなかった。
 それから、またぐるぐる。国王の御座船を維持管理している場所の辺りを通った時、私の気持ちは変わった。よし、観光していると思えばいい、と。
 結局、誰もバンコク銀行バンイーカン支店を知らなかった。タクシーの運転手が得意げに言った。
 「いい考えがある。さっき行った支店に戻り、銀行員に尋ねてみますよ」
 そりゃそうだ。それが一番。よくよく考えてみると、一般市民はATMで済ませているわけだから、支店の名前と場所を覚える必要がないわけだ。
 やっとバンイーカン支店に着いた。銀行の中にはあまり人がいない。私のパスポートを更新し、お金を下ろす手続きを待っていると、僧侶が入って来た。僧侶が通帳を持っているとは! 非常に不思議に思った。