大分旅行(終)

 臼杵の町ともそろそろお別れだ。臼杵藩の上級武士の屋敷へ行ってみた。タクシーの運転手から、「開放していますが、誰もいませんよ」と言われた。だが、中に入ってみると、着物を着た女性がいっぱい。午後から裏千家の御茶会が催されるとのこと。お茶の先生は私を丁重にあつかってくださった。これぞ、お茶の精神なり。屋敷の中を一通り見てまわると、<雪隠>と書かれた板が廊下奥に置かれてあった。時代を感じた。
 土産物店に寄った時、お勧めの喫茶店の場所をたずねてみた。すると、「啄木茶房」を紹介された。大分で啄木? 店に入ってみて、その理由がわかった。昔、そこの家の亭主が女性であると偽って啄木に手紙を出したため、啄木からの恋文がたくさん送られてきたらしく、それらが壁に飾られていた。地方の文学青年の熱き思いが伝わってきた。