『もの食う人びと』

『もの食う人びと』(辺見庸 角川文庫 1997)の冒頭部分である「旅立つ前に」の最初の文章を引用させていただく。
 「人びとはいま、どこで、なにを、どんな顔をして食っているのか。あるいは、どれほど食えないのか。ひもじさをどうしのぎ、耐えているのであろうか。日々ものを食べるという当たり前を、果たして人はどう意識しているのか、いないのか。食べる営みをめぐり、世界にどんな変化が兆しているのか。うちつづく地域紛争は、食べるという行為をどう押しつぶしているか….それらに触れるために、私はこれから長旅に出ようと思う。」
 巻末に、執筆当時の期間は1992年末から1994年3月であったと書かれてある。ということは、まだインターネットが流行る以前の時代だ。作者はジャーナリストだから、単なる料理の話を書いたわけではない。
 2020年、コロナで、世界中の人達があえいでいる。「食べる」ということは、まず、「口探し」から始めないといけない。働いて収入を得、スーパーで買い物をし、料理を作って、家族で食べる。この繰り返しが、この先、果たして確実にできるのか否か?