岡倉天心『茶の本』

今日から茶道教室が再開する。そこで、一夜漬けのような気持ちで、岡倉天心の『茶の本』を斜め読みした。この本はあまりにも有名な本なので多くの翻訳書が有るようだが、手元にあるのは、古本屋で見つけたもので、訳者はソーントン・F・直子さん(海南書房 1969年刊)。
 第一章「人間性の茶碗」の中に、次なる文章が見られる。コロナ禍の今、参考になる内容であると思う。
 
 ーー 茶礼の哲学は、一般に言われる審美主義ではありません。茶道は、倫理や宗教と融け合って、私たちが、いかに人間と自然との総体を見るべきかを示しているのです。
 また茶道は、きびしく清潔を説くので、衛生学といえます。複雑で高価なものよりも、むしろ簡素の中にこそ安らぎのあることを教えるので、経済哲学ともいえましょう。また、宇宙に対する人間の姿を定義することから、精神幾何学であるともいえます」
 
 反論するのがはばかられるが、現実の家元制度下における茶道の世界は魑魅魍魎。それはそれとして、精神を鍛えて、抹茶で免疫を高めたい。