夕焼けだんだんの古着物店

昨日、一枚の葉書が届いた。それは谷中銀座へ行く夕焼けだんだんのところに在る古着物店の店主からであった。
 「コロナ禍の中、お元気でお過ごしですか。突然ですが、このたび廃業を決断いたしました。私事の諸事情に加え、コロナの影響も拍車を加え閉店にいたりました。吉川様には大変ご愛顧いただき本当に感謝いたしております。この時勢のため、大々的な閉店セールもままならず…. 6月中頃まで自粛しつつ営業いたしております。全品処分価格にて提供いたしております。是非ともご用命いただきたくお願い申し上げます」
 丁寧な手書きの文字から店主の苦渋の声が聞こえて来た。
 店主は60歳半ば。それはそれは品の良い素敵な女性である。25年、一人で頑張って来られた。誠実なご商売の姿勢に私はいつも惹きつけられていた。彼女のご実家が骨董商を営んでいたことを知ると、なるほど確かな目を持っておられることも頷けた。