歳月人を待たず

 経済小説を読んでいたら、”There is a tide in the affairs of men.”という表現が出て来た。そして訳文は「人のなすことにはすべて潮時あり」と書いてあった。
 同じような意味を持つ表現として、”Time and tide wait for no man.”というのがある。こちらのほうが日本人には親しく感じられるかもしれない。要するに、「歳月人を待たず」ということである。
 私は日曜日に個人レッスンをやっているが、生徒さんは英語が苦手らしい。だから、あえて英語の話はしないようにしている。しかし、”Time and tide wait for no man.”くらいなら知っていてもいいのではないかと思って教えてあげたところ、彼女は言った。「歳月人を待たずという日本語の意味がわかりません。」
 それを聞いた私はびっくりした。世代の違いから来るもの? 「ぼやぼやしていたらだめ。早く自分のやることを決めて切磋琢磨しよう」と言いたかったが、余計なお世話であった。何故ならば、彼女は十分に頑張っておられるから。