王宮前広場へ(6)

小学生や中学生が御火葬殿をバックにして、クラスごとに記念写真を撮っていた。生徒達に対してはゲートで手渡された説明書を一人一人がきちんと胸のあたりに掲げ持つようにという指示がなされた。たまたまどこかへしまい込んでしまった生徒には、先生がすかさず自分のものを手渡した。そして全員そろって、ラーマ9世の御顔が入った説明書をきちんと持ち、カメラにおさまった。彼らにしてみれば、この時に撮った写真は末代まで語り尽くしても決して尽きることはないであろう。
 御火葬殿の最中心は非常に聖なる空間であった。天井から九層の白い傘がぶら下がり、それが微風を受けて静かに揺らいでいた。まさしくそこは「ร่ม(傘)+ เย็น(涼しい)=平和な」場所であった。そして、落ち着いた赤色の緞帳には金糸が精緻に刺繍されていた。タイに於いて最高の技術を持った芸術家が無償で造り上げたものであるそうだ。
 御火葬殿の真正面に立ち、案内人のバナナ君に頼んで、私も記念の写真を撮った。太陽光線があまりにも眩しくて目があけられない。そこでチャオプラヤー河方向に視線を向け、遠くにはためくタイ国旗に敬意を表する気持ちでカメラにおさまった。1969年からタイと関わった私。それはちょうど23歳の誕生日であった。あれから48年間、タイ、タイ、と言って暮らして来た。御火葬殿に向かってタイとの出会いに深く感謝の念を表した。