消えゆく日本語の動詞

 先日、タイ人が「屋根の上に上がって、瓦を敷き詰めています ขึ้นหลังคาปูกระเบื้อง」と言ったので、私は「屋根を葺いています」と訳すと、聞いている若い日本人が「屋根の掃除をしている」と勘違いした。何故、そんなことが起きたかというと、「屋根を拭く」と思ったからである。「屋根の場合は、屋根を葺く、と言うんですよ」と繰り返し説明したが駄目であった。
 ひるがえって考えてみると、たしかに都会ではヘーベルハウスみたいなものが多くなって、瓦を一枚一枚敷き詰めている光景がみられなくなって久しい。
 スーパーで魚の切り身をパックで買う若い奥さんたちの多くは、「魚を下ろす」という表現を知らないらしい。無洗米が出て来ているから、「米を研ぐ」ももう通じないかもしれない。「風呂を立てる」は完全に死語であろう。「茶を淹れる」が死語になる日が来ないことを祈る。