青森旅情(8)

いわて銀河鉄道は、目時駅から盛岡駅の間を往復している第三セクター路線で、元はと言えば東北本線だ。この目時駅から「アテンダント」という女性が黒いカバンを携えて乗車して来た。優しい声で、「何なりとお申しつけください」と放送後、車内を回り始めた。
 私の両隣りはお年寄り達。彼らに向かって、アテンダントは腰をかがめ、同じ目線で話しかける。「あんしん通院切符」という証明書をチェックしているようであった。右隣りのおばあさんが「忘れた」と言うと、「じゃあ、今度お願いします」と優しく応じる。少しの割引が有るようだ。盛岡駅から病院までの割安タクシー利用券も販売していた。
 老人の切符チェックが終わった後、不思議な光景を目の当たりにした。学校へ行きたくなくて泣きじゃくっている女の子をそのアテンダントがずっと抱きしめ、女の子の背中を軽く撫でてあげている。10分位、私はその光景を見ていた。やがて女の子は級友にうながされて降車した。