84歳の女将

このところ、仕事の関係で原宿方面へ毎日のように出かけているが、問題はランチの場所だ。人が多すぎて落ち着かない。そこで、神宮前周辺を散策しながら、昨日は「あきよし」というお店に入った。「おいでませ」と店の扉に書いてあったから、ついつい吸い込まれていった。
 扉を開けて店内に入った瞬間、異次元の空間を見てびっくり。いやもう驚いた。何故ならば、想像していた和食屋さんとは全く異なっていたからだ。もっとびっくりしたのは、女将のこと。客が一人しか入っていなかったので、つい年齢を訊いてしまった。
 真っ赤で長い丈のカーディガンをはおった女将は「84歳」と、気持ちよく答えてくれた。昭和37年(1962年)に開店して以来、ずっと一人で頑張っておられるとのこと。「店をやるのが好きなの。昔のお客さん達、上京すれば、来てくれるのよ。でも、今年いっぱいで店をたたんで、足腰が立つうちに、山口へ帰ります」
 私はこれからも彼女の店へ行こう。そして、彼女の55年間における女将魂を少しずつ聞き出したい。