哀悼のタイ王国(12)

 地方行幸をされる国王は森の中を先頭に立って歩かれる。一歩の幅が広い。大地を踏みしめる足に力が入っている。国王の頭の中には、農民の「生活の向上 ให้มีความชีวิตดีขึ้น」のことでいっぱいだ。農民が「苦しいです(ลำบาก)」と言うと、国王は、「どのくらい苦しいのか? ลำบากเท่าไหร่」とすぐ訊いてくださったそうだ。そして、「自分が苦しくない時は他の人を助けるように」とつけ加えられた。健康がすぐれない村人を見ると、「水がすべての源だから、清潔な水を確保するように」と助言。
 国王と水、それは切っても切れない話である。国王は、農民に対して、貯水(เก็บน้ำ)と灌漑(ระบายน้ำ)を力説し、ダム建設(สร้างเขื่อน)も果たされた。池(สระน้ำ)からの放流(ปล่อยน้ำ)も教えられた。国王はいつも、「やれる(ทำได้」とおっしゃられて農民を勇気づけられもなさった。国王の声(น้ำเสียง)は力強かった。注意すべき時は本当に注意をしておられた。
 国王の御歳を数えるのは、一般の「年 ปี」ではなくて、「雨 พรรษา」である。何回、雨季を経たかという数え方をするが、これを見ても国王と水は深い縁が有る。国王即位時、「灌頂 อภิเษก」という儀式が執り行われるが、これは頭の上に水をかける儀式である。