遠い親戚 遠い思い出

数日前、家の電話が鳴った。どうせまたお墓や鬘(かつら)の勧誘だろうと思ったから、受話器をとらなかった。しかし、数分後にまたしてもかかって来て、留守番電話に吹き込もうとしている女性の声が遠慮がちであったので、電話に出ることにした。
 「私は渡辺○○です。わかりますか?」
 「ああ、多度津の?」と私はすかさず応じた。
 彼女とはもう60年近く交流がなかった。だが、何故だか知らないが、最近、彼女のこと、彼女の家族のことが思い出されてくる日が有った。そんな中での電話! 不思議だ。
 彼女は思い出話を次から次に語った。私も「北山の井戸のお水がおいしくて、砂糖を入れて飲んだ時の味がいまだに忘れられないわ」と言った。
  私の祖母と彼女の祖父が姉弟の関係である。話をしていると、どうやら我々二人は顔の輪郭が似ているようだ。同い年であることもわかった。横浜に住んでいるという。いつかお茶をしようということになった。