呉服屋の老主人

昨日、仕事後、池上通りをのんびりと歩いていると、古びた呉服屋の前にやって来た。茶道を始めたので着物を着る必要が出てきた。そこで着物用品を買うことにした。
 昔の店だから、畳が敷いてあった。そこに老主人が坐っていた。帯締めが半額セールだったので2本、選んだ。その他に帯揚げ、肌襦袢、腰紐、半襟、等々を買って、合計¥20,050。レジスターなんて無い。御主人の御歳を尋ねると、84歳。
 「子供はサラリーマン。呉服屋はもう終わりです。蔵の中にしまっている着物をお金に換算すると結構なお金になります。私が死んだら、相続税のことで子供達が困りますから、今、どんどん縮小していっています」
 私が2万円を出すと、老人は商売の喜びを思い出したかのごとく、嬉しそうな表情を見せた。店を出ようとすると、タイ製の手提げ袋が店頭に飾られてあった。着物に似合いそうだ。