文化人類学者・言語学者の西江雅之先生

昨日の夕刊で西江雅之先生の訃報を知った。「ああ、先生….」
 1976年、アジア・アフリカ語学院でタイ語を教え始めた時、事務室で西江先生とよくお会いした。当時から、先生を慕うスワヒリ語の生徒が多かったので、先生の存在感はお会いするたびにひしひしと伝わってきた。驕り高ぶらず、ひょうひょうとして、物言いもおだやかそのもの。先生の放つ空気感に触れるだけで私は満足。学院以外でも、都内の書店で3回ほど、偶然にお会いしたことがある。先生と同じ場所に居合わせた喜び。今でも忘れない。そして、先生が晩年、アジア・アフリカ図書館館長を務められるようになってからは、また何度もお会いできるようになって、嬉しく思っていた。
 その後、今日まで、書店や古本屋へ行くたびに、西江雅之先生のご著書を買い求めている。『異郷日記』(青土社 2008年)のあとがきの一部を引用させていただく。
 「アフリカや南米の奥地にいた頃は普通であったような、文字も読めず、住む場所も定まらない人々の中に身を置くことが少なくなり、わたし自身が都会の半定住民となったのだから当然のことである。だが、わたしは今も‟異郷の人”である。自分の皮膚の外側は、すべて異郷だと感じている」