一犯一語

フランス文学者の椎名其二氏(1887-1962)を検索していたら、社会思想家の大杉栄(1885-1923)が関連して出てきた。大杉が翻訳していた『ファーブル昆虫記』を、大杉亡き後、椎名が引き継いで翻訳して完訳させたことがわかった。
 ところで、大杉栄だが、彼は軍人の父親の勤務の都合で、香川県丸亀市で生まれている。しかしすぐ他所に移って行ったようであるから、丸亀で彼の話を聞いたことは一度もない。
 私が彼のことを紹介する文章を読んで関心を持ったことは、彼のモットーが、「一犯一語」というものであったということだ。彼は活動家として逮捕されるたびに、「一犯一語」を自分に課し、まずはエスペラントから始め、次に、イタリア語、ドイツ語、ロシア語、スペイン語と学んで行ったようである。逮捕されて最初の3ヶ月で初歩を習得し、6ヶ月で字引き無しで解読することを目標にしたとのこと。フランス語はもともと出来たので、ヨーロッパの言語の習得は早かった。とはいえ、相当の集中力であったに違いない。
 彼曰く、「もう少し刑期が延びないものであろうか」、と。