日本語を教えるのも、また愉しかりけり

私は1974年に、国際交流基金主催の日本語教師養成講座に1年間通い、日本語教師の資格を取った。だが、タイ語教師の道を選んだので、この資格は一度も有効活用をしたことがない。
 ところが、泰日文化倶楽部のボン先生から、「主人に日本語を教えてくださいませんか?」という依頼が有ったので、3月から日本語を教え始めた。
 御主人はすでに1年半、自宅に家庭教師を招いて日本語を学んだ経緯があるので、私としては初心者扱いをせず、実用的な表現を教えるように心がけている。
 教えながら感じたことは、東京ですでに3年も生活しておられるから、日本語の音はたくさん耳に入っている。しかし、会社では英語で仕事をしているため、日本語を話す必要が無い。したがって、聞くのは少しわかっても、自ら話す自信は無いということだ。
 私はたくさんしゃべってもらうために、たくさん話しかける。まずはしゃべりたいという意欲を彼から引き出してあげることが肝心だと思っている。
 昨日の授業で傑作なことが有った。「その人は大田区に住んでいます」と私が言うと、彼は勘違いして聞いてしまった。「その人はオタク」、と。どうやらオタクという単語は彼の耳によく入っていたようだ。
 いずれにせよ、本当に分からない点に対しては、私がタイ語で説明してあげることができるので、家庭教師から習っていた時よりも、日本語に対するもやもや感が無くなって、ものすごくよく理解できるようになったようである。