林芙美子の家

昨日、午前の授業と午後の授業の間に3時間の空き時間が有った。天気が良かったので、高田馬場駅から西武新宿線に乗って二つ目の駅である中井へ行く。目的は林芙美子の家(林芙美子記念館)へ行き、芙美子の残した作家としての息づかいを感じとってくること。
 中井駅の改札を出ると、線路脇にタイ国旗がひらめいていた。「サワッディー」というタイ料理店は以前にも泰日文化倶楽部の生徒と来たことがあったが、オーナー・チェンジで味が落ちたという生徒達の意見にしたがって、ここ3年ばかりごぶさたしていた。店内ではタイ語がわからない日本人として振る舞っていたが、以前のオーナーであったおばあちゃんの話をタイ語ですると、「あら、タイ人だったの?」と、びっくりされた。
 ところで、林芙美子の家だが、実にすばらしい京風の日本建築であった。彼女が38歳の時に建てたとは! 私はかつてそこへ歩いて行く圏内に住んでいたのに、あまりにも近すぎて、いつでも行けると思いつつ、一度も行ったことがない。
 芙美子の書斎に明かりが灯っていた。まるで芙美子の亡霊が鎮座しているようであった。展示室では彼女の肉声テープが流されていたが、積極的な発言を聞いて、とても魅力的な女性に思われた。『放浪記』の宣伝に使われていた暗い写真のイメージが強すぎて、これまで彼女を敬遠していたが、まさしく作家魂を十分に備えた作家であったことがよくわかった。