推薦状

『見えないものを大切に』(澤田昭夫著・聖母文庫 2001年)の中に、推薦状のことが書かれてあった。
 「四十年近く大学で教えている間に、沢山の推薦状を書いても来ましたし、読まされても来ました。ひとつ気がついたのは、日本で通用する推薦状には長所しか書いてないもの、また、熱心で温厚だという抽象的なきまり文句しか書いてないものが圧倒的に多いということです。私が学んだり教えたりして知っている外国の大学では、こういう推薦状は信用されません」
 私も最近、元生徒さんから依頼を受けて推薦状を書いた。もちろん長所しか書かなかった。いかにも日本的といえば日本的である。
 私が格闘したのは、封筒の表に書く「推薦状」という漢字であった。特に、「薦」という字は手書きをすることが滅多にないので、何回も書き直した。「薦」には、「この人を特にすすめる」という意味があるとのこと。なるほど、字画が多くて書くのに手こずるはずだ。