日本語を習っているタイ人から、「これ、何ですか?」といって見せられたのは、てるてる坊主であった。
「ああ、これはですね、てるてる坊主と言います」と答えると、彼はさらに尋ねた。「何のため?」
そこで、私は説明してあげた。「子どもが遠足に行く時、雨が降らないようにと願って、てるてる坊主を作り、縁側につるして置く習慣があります」
雨といえばスコールのイメージが強いタイ。そのタイから来た彼には、私がいくら説明してあげても、納得がいかず、ただただ気味わるがるばかりであった。
そういえば、最近、てるてる坊主を見なくなった。いつも庇のところにぶらさげていた民家があるが、もはやその家は朽ち果ててしまい、はたして住んでいる人がいるのかどうかも怪しくなった。子供達が成長し家を出たようだ。
大正ロマンの香るお屋敷も解体され、マンションとして生まれ変わった。鉄骨の窓枠に〝てるてる坊主″はもうみられない。