昨日、NHKの「小さな旅」で、尾道の向島が紹介された。教え子がそこに住んでいるので、興味を持って見た。瀬戸内風景は私にとって原風景だから、とりたてて珍しくもないが、番組の中で、帆に使う帆布を50年以上、夫婦で織っている工場が紹介された。ご主人は82歳、奥さんは78歳。お二人とも仕事に対してとても意欲的であった。
「朝起きると、仕事をすることが当たり前になっているので、これからも変わりません」と奥さんは言った。最近は帆布に対するニーズが増えてきているので、彼らはそのニーズにひたすら応えようとしている。
その工場に、1年前、東京の美術大学を卒業した若い女性がやって来て、ご夫婦の仕事を手伝い始めた。見学に来た時、その工場に魅せられ、移住を決意したそうだ。老婦人と若い娘。ものすごく対照的だ。だが、もしも彼女が後継者になれば、帆布を織る技術は伝承されていく。
長く仕事をしていると、仕事って、何だろうか? 何歳までやって、何歳でやめるべきか?、ということを考えるが、帆布のご夫婦を見ていると、仕事は日常生活の中にうまく入りきっている。番組では、「櫓」を造るおじさんも紹介されたが、彼も「仕事一筋人間」であった。瀬戸内のおだやかなリズムは、職人の仕事を自然に生かしているようだ。