忘れ物

 一昨日の朝、都電(さくらトラム)に乗ると、先頭の席に幼稚園児が座らずに立っていた。運転手のすぐ後ろだから、坊やの気持ちはよくわかる。近くにパパがいた。そして、東池袋駅に着くと、パパが息子をせかし、二人はあたふたと降りて行った。
 すると、80歳代の老人が乗車して来て、すかさずその場所に座ろうとした。何故ならばそこは優先席であったから。しかし、老人は席の下から幼稚園児の袋物を発見。どうしたものかと迷っていたが、ついに運転手に差し出した。
 運転手は中から絵本を取り出しながら、こう言った。「最後に発見された方ですから、一定期間が経てば、あなたのものになります。どうなさいますか?」 もちろん、老人は首を横に振った。
 一連の光景を傍観しながら、なんだかお話が書けそうな気がしてきた。パパと坊やは忘れ物に気がついて、今頃慌ててるだろうなあ…..。そして、帰宅するとママに叱られるだろうなあ…..。