或る美容師さんの話

 昨日、近所の美容院へ行った。美容師さんは短く切るのがお好きなタイプなので、いつもおまかせ。
 「先ほど、半年ぶりにカットにお見えになられたお客様がおられます」と彼は言った。
 それを聞いて、私は昔の美容師さんの言葉を思い出した。「こまめにカットに来てくださると、やりやすいんですがね」
 何事にも言える。こまめさが大事。億劫がっていると、ますます負の方向へと進むのである。
 お盆が近いこともあって、美容師さんが彼の郷里(山形県)の話を始めた。「親戚から言われましたよ。頼むから今年は墓参りに帰って来ないで、と。私の家は、たとえて言えば、テレビ番組[ポツンと一軒家]の状態に近いんです。親父が建てた家はそのうち森の中に埋もれ、森と化すでしょう」
 美容師さんの仕事は髪をカットすること。しかし、ご自分のルーツである家は、人の手が入らぬまま、生い茂る森の中で自然と同化して行く…..。