蝉 と 禅

 先週の土曜日の午後、個人レッスンをしている時、蝉の鳴き声がとてもうるさかった。だが、よく考えてみれば、今年初めて聞く蝉の声だ。コンクリートのジャングルの中で鳴く蝉がいとおしく思われた。そこで、生徒さんに向かって発破をかけた。
 「私達も蝉に負けないように、大きな声で発音しましょう!」
 帰宅して、禅僧が書いた本を読んだ。「禅の世界では、修業の読み方は、しゅぎょうではなくて、しゅごうと読みます。業(ごう)なのであります」と書いた一文が有った。
 仏教関係の漢字の読み方はとかく難しい。なるほど、そうなのか、とだけ思うことにした。
 しかし、ふと、昼間の蝉を思い出した。鳴いていたあの蝉は、蝉なりに短い数日の夏を生き抜くという修業をしていたのであろうか…..。
 蝉の姿は見ていない。だが、蝉の声はまさしく禅であった。