31年間、走り続けるタクシー運転手

昨日、赤坂7丁目にある草月会館でランチをした。窓越しに見える高橋是清翁記念公園の大木の緑が目にさわやかであった。1936年2月26日にこの地で暗殺事件が有ったとは……。
 食後、外に出てみると、246号線にはタクシーがいっぱい停車していた。だが、客待ちではなくて、どうやら運転手達が午後の休憩をしているようであった。昨日の東京は今年一番の暑さ。無理もない。
 私は信濃町駅までタクシーで行くことにした。そこで遠くから走って来たタクシーに手で合図した。タクシーは急停車して20m先で止まった。運転手は饒舌であった。
 「いやあー、すみません。気がつくのが遅くて。31年、やっている自分が恥ずかしい。お客さん、31年、私は東京の隅から隅まで走っています。こんなに続いているタクシーの運転手はいませんよ」
 それを聞いて、私は心の中で言い返した。「私だって、約31年、タイ語教室をやっていますよ。あなたに負けてません」
 年齢を尋ねると、彼は71歳。タクシーを降りる時、「私は72歳。あなたよりもお姉さんですね」と、言って別れた。