はんこ屋

 昨日、はんこ屋の前を通りかかった。時間が有ったので、はんこ入れを買い替えようと思って店内に入った。昔に比べて半分の広さになってしまった店だが、今でも踏ん張って頑張っている。恰幅がよかったご主人はかなり前に亡くなられ、奥さんが一人でやっておられる店だ。
 どうせ三文判だから、はんこ入れは安くてもいいのだが、いろいろと見せられると、縁起かつぎの気持ちも込めて、高いものを買うことにした。そして、壊れかかったはんこ入れを差し出して、「あのー、これ、捨ててください」と、私が言うと、奥さんはそれを小箱にしまった。そして言った。
 「捨てたりはしません。下賀茂神社に預かっていただくのです。私が直接行くわけではありませんが、月に一度、業者が集めに来ますので、その際、お願いするのです」
 ごみ箱にポンと捨てればいいと思っていた私は、はんこ入れが京都の下神茂神社まで行くことに驚いた。今度、京都へ行く機会があれば、是非、お参りしたい。