ゲートを通過した時、車イスのサービスが有るのがわかったが、私は杖をついて歩くことにした。御火葬殿(พระเมรุทาศ プラメールマート)とその四方に配置された付随殿の敷地には石板(スレート)が敷き詰められ、雨が降ってもぬかるみが出来ないようになっていた。
付随殿の両側に水田が造られて、長く伸びた稲が植えられていた。それを見て、稲の神様がこの王宮前広場をしっかりと守っていることがよくわかった。スコータイ時代に残されたあの碑文の冒頭がすかさず思い出された。やはりタイの精神には水と稲は切っても切れないものなのである。
御火葬殿の周囲には池が配置され、その水の中で穢れ無き動物達がたくさん遊んでいた。なかでも多かったのはやはり象群だ。頭と胴が象で、尻尾が魚という半象半魚の物体も有った。牛、鹿、馬、いずれもとても忠実な従者になっていた。
上壇に進むにつれて、龍神(ナーガ)の頭が三頭、五頭、九頭と次第に増えて行くのがとても力強く思われた。四方に配置された天女(テワダー)のお顔が神々しく光り、御火葬殿全体に優しさを添えていた。